第17回「Hakuju ギター・フェスタ2023」が8/18(金)~20(日)の4日間開催され、「福田進一」「荘村清志」「河野智美」など一流ギタリストとともに岡本拓也氏のソロコンサートが8/19(土)に開かれました。今回はその時の様子をご紹介したいと思います。
会場の様子
斬新なデザインが目を引く「Hakuju Hall」は、ホール内の床に全てサクラ材を使用した事と柔らかい音としっかりとした低音が特徴で、専門の音響設計を基に、すこぶる素晴らしい音響を備えています。近年「東京国際ギターコンクール」が毎年このホールで開催されているのも頷けます。岡本氏の演奏が始まると、まずその音色・音量にハッとしました。
演奏内容等について
今回のプログラムに目を通すと、驚きとともに「なかなかやるなあ」とニヤリ。なんと<全曲ロマン派>という大胆さ。様々な演奏家が居ますが、今までこんな曲目構成は見たことがありません。
そうしているうちに300席はほぼ満席となり、岡本氏の人気の高さを改めて感じましたね。
満場の拍手喝采とともに登場すると「旬のギタリストの岡本拓也です(※)」と一言。すると一斉に会場から笑いが起こり、場の雰囲気が一瞬にして和らぎました。かなりMCも上手くなりましたね。((※)プログラムに記載されていたキャッチコピー)
楽器はロマン派にあわせて【19世紀ギター】を使い、演奏を始めると音響効果は予想を上回り、その「音の広がり」と「音色の円(まろ)やかさ・艶」に惹き込まれました。
プログラム内容
◎ロマン派の音楽とは……
17世紀の「古典派」が<合理的>とか<理性的>な考え方を基に、「均整の取れた構成美」を生み出したのに対抗し、19世紀に入ると「理想・感性・夢なと個人の感情や非日常をテーマにした音楽」へ移行していきました。その音楽こそが「ロマン派の音楽」です。ロマン派の時代では「恋愛・情緒・喜び・不安・苦悩・憂鬱など」が大きな音楽テーマになっていた様です。
今回のプログラムでわかる通り、全ての曲に表題が付与されています。その表題が個人の心情等を表しており、真にロマン派の特徴を的確に示していますね。
岡本氏の演奏はロマン派の神髄である<規律より感情表現>に重きを置いた抒情的な演奏を聞かせてくれました。「本当にロマン派が好きなんだな」と素直に感動しました。
中でも、レゴンディのノクターン『夢』で演奏されたトレモロは<乙女の夢見ごこち>をそのまま表現した様な本当に美しい粒ぞろいの音色でした。
シューマンの『トロイメライ』では現代ギターに持ち替え、低音の響きを意識した編曲(おそらく自身で編曲?)で深い味わいを醸し出していました。
アンコールではバロック時代の作曲家クープランの『牧歌』を演奏し、内容の濃いコンサートに幕を下ろしました。
最後に
実は昨年12月、声楽家・中嶋俊晴氏とのコンサート終了後、ご本人とお話する機会があり今後の演奏スタンスをお聞きしたところ、「ソロコンサート」を重視していきたいとのコメントがありました。おそらくその頃からすでに「ロマン派音楽」を温めていたのではないでしょうか。
他のギタリストとは一線を画す独自の演奏スタイルをこれからも深化させ、オンリーワンの演奏家を目指して頑張って欲しいと切に願っています。これからが本当に楽しみですね!
レゴンディのノクターン『夢』(一部)