とても久しぶりにクラシックギターのことをブログに書いてみます。
表題の通り、昨日岡本拓也さんのリサイタルに行って来ました。彼のことは以前このブログで紹介していましたが、その中で<これからのクラシックギター界を背負って立つ演奏家になるであろう>と熱く語りました。その記事は反響も多く、クラシックギターファンの関心の強さを肌で感じました。良かったらその記事もご覧ください。⇩
将来を大いに嘱望される若手クラシックギタリストがついに出現! <岡本拓也>とは…… - カワセミのまなざし
東京文化会館小ホール
ここは国内外の著名芸術家が数多くリサイタルを開いている伝統のある音楽ホールです。クラシックギターで言えば、あのセゴビアもここで伝説のリサイタルを行いました。ここで演奏出来ると言うことは一つのステータスになります。ちなみに、日本を代表する世界的なクラシックギタリスト「福田進一氏」も5/15にここでリサイタルを開きます。
会館に入り、受付近くで<スマートで上品な姿>のポスターを見ると気分も高まりました。
会場に入ると本人に代わって等身大のパネルがお迎えしてくれました。コンサートの中で、「クラシックギターのコンサートでこんな事をやるのは私が初めてだと思います。」と笑いを誘っていました。コンサート後の本人挨拶が密になることを避け、コロナ対策でそうしたそうです。
会場に入るとほぼ満席状態、その熱気のこもった雰囲気に圧倒されました。
演奏を聴いて思ったこと・感じたこと
プログラム内容
- 前半は緊張感のあるバロック音楽ため、音楽の流れを切らさない様にMCなしでした。
- 後半はスペイン音楽と現代音楽を組み合わせ、MC有りの終始穏やかな雰囲気で演奏が進みました。
- アンコールはタレガのラグリマ(小品)のみ。
<演奏内容>
このコンサートを聴いて思ったこと・感じたこと
約1年8ヶ月ぶりに聴いた演奏でしたが、目指す【音楽の方向性】をしっかりと感じ取ることができ、演奏後には充足感に満ちた心持ちで席を立つことが出来ました。
以前、ブログ記事の中で岡本さんの演奏を次の通り評価しました。
岡本さんの演奏には、そんな<知性的な気品>を感じるため、私はドキッとしました。
「リズム」「強弱」「アーティキュレーション(=音楽の流れ)」「テンポ」「音色」
5つの『演奏の構成要素』をしっかり感じ取ることが出来たので、何度でも聞きたくなるのです。
今回もこの5つの『演奏の構成要素』を意識しながら聴いていましたが、すべての要素を注意深く音楽に刻みながら演奏していることをハッキリと感じ取ることが出来ました。そして更に、音楽に<色彩と大胆さ>が付加されたようにも感じました.
そんな作曲家の特性を5つの『演奏の構成要素』に分解し、自分なりに再構築し見事に演奏で表現していたと思います。
詳しいことを説明すれば切りがないので、今回は『音色』だけをピックアップしますと....
クラシックギターでは高音をしっかりと出すことはとても難しいと思います。とくにハイポジションと言われる1弦の12フレット以上の高い音を美しく響かせることは至難の業になります。岡本さんの音は高音でありながら、美しく艶があり、こころに訴える深い優しさを感じ取ることが出来ました。それに気づいたのは、ラモーの「芸術と時間」を演奏している時でした。その時、久しぶりに心が震えました。
思わぬプレゼント
実は、ラモーの「芸術と時間」(オラフソン編)は初めて聞いた曲でした。今までラモーと言えば「二つのメヌエット」しか知りませんでした。あまりにも美しい曲で、思わぬプレゼントを頂いたような嬉しい気分になりました。
この曲は歌劇『レ・ボレアド』の中で演奏されている静謐な曲で、それをピアノに編曲したのがアイスランド生まれの天才ピアニスト、ヴィキングル・オラフソンとのこと。そして、オラフソンの名演奏を聞いて感動した岡本さんが自身でギター曲にアレンジしたのではないでしょうか?
よく見つけ、よく編曲したなあと感心しきりです。
最後に
期待を裏切らない名演奏でした。そして岡本さんの「誠実で優しい人柄」に観衆が拍手したこともお伝えしおきます。 これからも活躍がますます楽しみです。