カワセミのまなざし

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清流の中に濁りを見つけ出す

庶民派『シュルツ首相』は誕生するのか⁈ 【独連邦議会選挙】

・記事最新更新日 2017/5/15

9月のドイツ連邦議会選挙は全く不透明になって来ました。

中道右派(保守派)『キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)』メルケル首相の独壇場と思われていましたが、ここに来て支持率が下がってきたからです。

 

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公共放送ARDが2月24日に発表した調査によりますと、両党の支持率は

となり、遂にSPDが1pt差ながら首位に立ちました。

 

 支持率低下の原因は2つあります。

 

(その1)国民の絶対的信頼を得ていたメルケル首相への政策批判の高まり

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メルケル首相(62歳)について

メルケル政権は昨年12月で就任12年目を迎えました。メルケル首相はドイツ史上初の女性かつ旧東独出身の首相です。

サクセスストーリー

大学で物理学の博士号を取得し、学者の道を歩んでいましたが、1989年11月にベルリンの壁が崩壊。このとき彼女は「政治家になってドイツ統一を早急に果たし、市場経済を導入したい」と考え、政治家の道を進むようになります。

東西ドイツ統一後にキリスト教民主同盟(CDU)に入党し、当時のコール首相に見込まれ、党幹事長にまで登り詰め、2000年にCDUの党首に就任。2005年の総選挙後、首相になりました。

その後、EU議長国及びG8議長国としての成功や、欧州債務危機(特にギリシャ危機)への手堅い対応、ウクライナ情勢を巡る強いイニシアチブなど、様々な課題を解決に導いてきた政治力は高く評価され、国民の人気も高くなりました。

最大の政治危機の勃発

2015年秋以降急増した中東からの難民に対し、受入れ上限を定めないオープンドア」政策を掲げ、寛容な難民受け入れを表明してから、国内・与党からも大きな批判を浴びるようになりました。

2016年9月の2州での州議会選挙では、難民問題がクローズアップされて新興右派政党「AfD」が伸長し、批判がさらに加速することになりました。

 

(その2)中道左派社会民主党SPD)』の人気が急上昇したことです。

その最大の要因は、今年1月にSPD党首に就いた《シュルツ氏》の存在です。

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4年間欧州議会議長を全うし、人気の無いガブリエル氏から党首の座を禅譲されたシュルツ党首は、ドイツ国内政治に殆ど関わらず、その「新鮮さ」と過去の’’失策’’を修正しようとする「率直な姿勢」と「庶民的な人柄」が評価されて、人気が急上昇しました。

 

シュルツ氏(61歳)とは一体何者なのでしょうか?

現在では「6ヶ国語を操る欧州各国に人脈をもつ国際派」とのイメージが強いようですが、過去を振り返ると、その印象とは全く違う興味深い歩みがあります。

若い頃はドイツ西部の高校でサッカー選手を目指していましたが、怪我で断念しました。

さらに高校卒業にも失敗し、大学進学を断念したため、一時期アルコール依存性に陥った時期もあったようです。

20歳頃立ち直り、その後5年間はどういう訳か、ヨーロッパ各国の出版社や書店を渡り歩き、書店経営を学びました。

そして、転機が訪れます。

1972年にドイツ社会民主党SPD)に入党すると、メキメキと頭角を現し、1984年にヴュアゼーレン市議会議員に当選し、1987年には州内では当時’’最年少市長’’を務めることになりました。(32歳)

1994年の欧州議会議員選挙で当選し、活動の場を欧州議会に移します。(39歳)

2004年の選挙後は、スペインのエンリケ・バロン・クレスポの後を受けて、院内会派の代表となります。(49歳)

 2012年の欧州議会議長選挙では、各会派の綱引きの結果、ついにシュルツ氏が議長に当選し、2014年にも再選を果たします。(57歳)

そして、今回議長3期目を務めることは無く、冒頭で述べた通り、ついにドイツ首相を目指して、今年1月にSPDの党首に就任しました。(61歳)

 

メルケル首相が物理学の博士号を持っているに対して、シュルツ氏は経歴の通り挫折感が根底にあり、その人間臭さ・親しみやすさが国民を惹きつけているようです

 

 

シュルツ氏の政権方針

詳細な政権公約は5月以降に明らかにするようですが、これまでのSPDの集会での発言等から、公約の大枠が見えてきました。

社会保障 

 雇用不安と高齢者の貧困に的を絞り、所得格差を減らすために以下の政策を示しています。

  • 非正規雇用契約の縮小
  • 年金制度の維持を中心とした社会保障の充実
  • 労働者を解雇から守る制度の導入

 

以上の政策はシュレーダー元首相(SPD:1999-2005)が進めた「社会保障の抜本的な改革」を覆すものです。(失政を認める姿勢)

 

 財政政策面

「数十億ユーロもの財政黒字があるのなら、高所得者向けの減税に使うのでは無く、投資に回すべきだ」との考えから次の政策に力点を置いています。

  • 教育、インフラ、デジタル技術への投資拡大
  • 特に、インフラ面では公共交通の遅延やインターネットの通信速度の改善を目指し、市民生活に目配りをしています。
 ギリシャ危機対策

ギリシャが受け入れるべき財政緊縮政策を緩和する姿勢を見せています。

 「ギリシャをもっと苦しい状況に追いやり、賃金と年金が下がってしまえば、どうして経済成長を生み出せるだろうか」との考え方をとっています。

 

上記の主要政策を採ることで、支持基盤の労働者層を繋ぎ止めるだけでは無く、メルケル首相に奪い取られた、ポピュリズムが台頭することを嫌うリベラル層への浸透を図っているようです

 

 

 最後に

果たしてこのムードが9月までの議会選まで続くかは疑問です。ご祝儀相場が一巡すれば支持率が下がるとの心配は党内でもあるようです。

福祉を拡充するならその財源は何か? 難民政策と治安をどう両立させるか? 公約が発表されない中、ドイツ国民は厳しい目線を注いでいます。

国際情勢も影響します。仏大統領選で極右のルペン氏が健闘したり、米独の外交対立が激化したりすると、安定志向が強まりメルケル氏が有利となります。

いづれにせよ、9月の議会選は僅差の勝負となり、2大政党の大連立は避けて通れない様相です。

フランスのようなナショナリズムの政治リスクがないことは、欧州の政局安定の好材料です。

★12年間のメルケル長期政権を国民がどう判断するか、その最初の材料となるのが5月以降に発表されるシュルツ氏の政権公約の中身ですね。

注目しましょう!!

 

ドイツ地方選でメルケル氏が3連勝。14日の州議会選では最大野党の牙城を崩しました。(2017/5/15)

 

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ドイツ西部、ノルトライン・ウェストファーレン州で行われた14日の州議会選挙で、メルケル首相が率いる保守系キリスト教民主同盟(CDU)が勝利を確実にしました。

同州は最大の人口を抱え、9月の連邦議会選挙の前哨戦との位置付けで、ドイツ社会民主党(SPD)の失速が鮮明で、メルケル氏は首相続投に向けて前進しました

同州はSPDの地盤で、選挙戦序盤はSPDがリードしていました。ただし、公共放送ARDによると、14日の選挙の得票率はCDUがSPDをかわしました。CDUは3月のザールラント州、5月のシュレスウィヒ・ホルシュタイン州でも勝利しており、連邦議会選に向けた3つの前哨戦を全勝したことになります。

「SPDにとって厳しい日だ。重要な州選挙で敗れてしまった」。SPDのシュルツ党首は敗退を認めました。

政経験が無い同氏は「新鮮さ」を前面に出し、首相候補として一時はメルケル氏を超える人気を集めしたが、選挙戦では強みを発揮できず、前回2012年の選挙の得票率でCDUに10ポイント以上の差をつけた牙城を守れませんでした。

何故このような結果になったのでしょうか?

  1. CDUを勝利に導いたのは欧州の先行き不透明感が強まるなか、有権者が「新鮮さ」より「実績」や「安定感」を重視したためです。
  2. 幻想を抱くな――。欧州連合(EU)を離脱する英国に対して、メルケル首相は厳しい態度をみせています。選挙直前の5月初め、ロシアのプーチン大統領との首脳会談ではウクライナ問題などで一歩も引かず、ロシア国内の人権問題にも注を付けました。「トランプ政権の誕生」や「英国のEU離脱」そして「極右勢力の台頭」で欧州の先行きの不透明感が増すほど、強いリーダーを演じるメルケル氏の人気が高まる構図なったようです。
  3. 14日に選挙が行われた州の中核都市ケルンでは15年の大みそかに外国人による集団暴行事件がありました。地元メディアの調査によると、治安への不安が中道左派のSPDよりも保守派のCDUに優位に働いた面があり、教育やインフラなどでの州政府への不満も、SPDには逆風になりました。

今回の敗北でシュルツ氏の危機感は高まりました。

今後の政策公約発表で、大逆転を図っていくものと思われます。

大いに期待したいですね。

 

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