カワセミのまなざし

読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

カワセミのまなざし

清流の中に濁りを見つけ出す

女性党首マリーヌ・ルペン氏の公約は’’悪魔のささやき’’でしょうか⁉︎【仏大統領選】

政治 政治-国際政治

f:id:Hatabou:20170213224348j:plain

・記事更新 2017/3/26

 フランスが揺れています。

極右政党国民戦線(FN)」党首マリーヌ・ルペンが、仏大統領選の世論調査では他の候補者を押し退けて、トップの人気を維持しているからです。

もし「ルペン大統領」が誕生したらどうなるのか、多少の現実味を帯び始めた中、警戒感が増して来ました。

どうしてこんな事になったのでしょうか?

 

 実は「国民戦線(FN)」の変貌と外部環境の変化がその大きな要因です。

 

  国民戦線(FN)」の変貌

 

 1.FNの創設

 1972年 ルペン氏の父、ジャン・マリー・ルペン氏が右派勢力を集めて創設しました。

政策は、排外主義、国粋主義、独裁主義を貫き、移民の制限、犯罪者への寛容ゼロの立場から死刑の復活を唱え、国籍には血統主義をとり、ナチスガス室に懐疑的発言を繰り返す等の暴言癖もあり、泡沫(ほうまつ)政党に過ぎませんでした。

 2.FNの転機

2011年 実父ジャン・マリー・ルペン氏の推薦があり、マリーヌ・ルペン氏が第二代党首に就きました。  

 <マリーヌ・ルペン氏の経歴>
・1968年 パリ郊外ヌイイ・シュル・セーヌ生まれの48歳。
・パリ第二大学卒業後、弁護士として活躍。
・2003年 FNの副党首に選出される。
・2004年 フランス地域圏選挙に当選し、本格的に政治活動を開始。
・同年 欧州議会議員選挙に当選し、2009年・2014年も再選される。
・2011年 FNの党首に選出される。
・2012年 大統領選挙に立候補。FN初の女性候補として話題を呼び、第1回投票で3位に食い込む。 

 

マリーヌ・ルペン氏は穏健化路線に舵を切り始めたことで、流れが変わってきました。

その背景には、ルペン氏が真剣に国政への進出を視野に入れ始めたことがあります。

主張はマイルドなものに転換しました。

このソフト化路線へのシフトを、ルペン党首が自ら「脱・悪魔化」と呼んでいます。

2015年8月ルペン党首は、ホロコーストに関する発言を再び行った、実父ジャン・マリー・ルペン氏を何と除名処分にしました。

 

そして、ルペン氏は女性へのイメージ戦略を次の通り実施してきました。

・ルペン氏のブログには「自由な女性であり、母親、フランス人。国の為に尽くすことを選んだ」と書いています。

・ルペン氏は自身を《弁護士の資格を持ち、現代の働く女性像を体現している》と政党を通じてメディアに訴えています。

 

この結果、ルペン党首が就任して以降は女性の支持も上昇しています。

こうやって、FNは徐々に国民に身近な政党に変貌してきました。 f:id:Hatabou:20170214135203j:image

 

外部環境の変化

 

  •  景気停滞に伴う失業増や移民増に伴う社会不安に対して、それぞれ有効な手段を打てないでいる二大政党への不満の高まり
  • そんな状況下で発生した2015年のパリ同時多発テロによる恐怖
  • イギリスのEU離脱問題。
  • 米国のトランプ大統領誕生。

 

★以上の通り「国民戦線(FN)」の変貌と外部環境の変化がFNへの期待を膨らませることになり、ルペン大統領誕生を後押ししているのです。

 

このようなフォローの風が吹く中 

2月4日、マリーヌ・ルペン氏の発表した公約概要は以下の通りです。

 

国家主権を取り戻す

そのために以下の公約を果たす。

・ユーロから離脱し、自国通貨「フランス・フラン」への回帰。

シェンゲン協定(ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えることを許す協定)からの離脱。

EU離脱を問う国民投票の実施。

・移民受け入れを1万人に制限する。

・1万5千人警官を増員し、警察署と刑務所も増やす。

・あからさまな人種差別的表現は慎重に避けて、イスラム過激派がもたらす脅威だけを論じる。

・輸入品と外国人労働者には課税し、外国からの投資は厳しい統制下に置く。

・軍事支出を大幅に拡大し、新たな装備は全て国内の軍需産業から調達する。

所得税を大幅に減税し、財産贈与の非課税枠を大幅に拡大する。

 

この発表では、権力を獲得した場合の構想を144の「大統領公約」という形で明示しています。

公約中の施策は「理知的な保護主義を示しているため、以前より幅広い支持を得ています

前回大統領選の公約であった「死刑制度復活」「宗教色の強いものを身につけての公的施設への入館禁止」は今回は消えました。

 

この公約は’’悪魔のささやき’’なのでしょうか?

 

翌5日の演説では、トランプ米大統領誕生や英国のEU離脱決定などを挙げ、「歴史の風向きは変わった」とボルテージを上げています。

 f:id:Hatabou:20170214135230j:image

 

 

他の有力候補者は心もとない状況が続いています。

 

 ルペン氏の対抗馬とみられる中道系の独立候補「マクロン前経済産業デジタル相(39)」は、投資銀行出身で経済には強いのですが、議員経験がないため政治基盤が脆弱で不安が多いですね。f:id:Hatabou:20170214135704j:image

 

 

もうひとりの有力候補である共和党中道右派の「フィヨン元首相(62)」は、家族への不正給与疑惑が広がり、支持率が低下しています。f:id:Hatabou:20170214135718j:image

 

 ルペン大統領は誕生するのか? 

  多くの有識者が「難しい」との見方を示しています。

 その根拠は 

  1.  仏大統領選は2回投票制で、第1回投票で首位となっても、決選投票で極右の伸長を防ぐメカニズム」が働く。
  2. 多くの国民はFNの「移民や対EU施策」は過激と感じている英米に比べ、社会保障が手厚く格差も大きくない。故に、テロ等の不測事態が発生しない限り、現時点では国民の多くが過激な選択はしない

ということです。 

 

本当にそうでしょうか?

トランプ氏のことを思い出して下さい。

誰れもがトランプ氏の当選を予想していませんでした。

もし、支持をしながらも公言しない《隠れルペン》が多く潜んでいたら……

 

いよいよ4〜5月のフランス大統領選が“きな臭く”なって来ました。

 

ついにマクロン氏の反撃開始か?(2017/3/3)

 f:id:Hatabou:20170303155647j:plain

3月2日、パリ市内でマクロン氏が政権公約を発表しました。

ルペン氏率いる国民戦線(FN)との差別化をかなり意識した内容です。

外交・安全保障面
  • マクロン氏:  EUとの連携を強化。
  • ルペン氏   :  EU離脱を問う国民投票を実施。
シェンゲン協定(地域内の自由移動)について
  • マクロン氏:  協定を堅持する。
  • ルペン氏   :  協定から離脱する。
財政運営面
  • マクロン氏:  歳出削減と公共投資をバランスさせ、成長を追求する。
  • ルペン氏   :  積極的に財政支出を行う。

 

以上の通り、両者の公約は極めて対照的ですね。   

 

 3月1日、調査会社「Ifop」が公表した調査結果では

第1回投票(4/3)での支持率予想は
  • ルペン氏   25.5%  
  • マクロン氏  24%
  • フィヨン氏  21%
第2回決戦投票(5/7 上位2名)では

マクロン氏が62%の支持を得て勝利すると予想しています。 

なぜなら「ユーロ離脱は資本流出を招き、フランが暴落する。そうすると、購買力の落ちた家計にしわ寄せがいく」との思いから、国民の多くがFNの過激さに対する拒否感と警戒心は変わらないと推測しているからですね。

 

果たしてどう動くのか?

いよいよ、本選に向けた政策論争がスタートします。

 

何とロシアのプーチン大統領がルペン党首と会談(2017/3/24)

 f:id:Hatabou:20170326194912j:plain

ロシアのプーチン大統領が24日、モスクワを訪問したルペン党首と会談しました。

ロシア大統領が選挙前の他国党首と会談することは異例であり、その意図が憶測を呼んでいます。

プーチン氏はルペン氏との会談で「今起きていること(仏大統領選)に影響を与えることは望んでいない。しかし、我々にはどの党の代表であれ、つきあう権利がある」と述べ、ルペン党首を評価する考えを示しました。

 

今回の訪問で垣間見えたルペン党首の『対ロシアのスタンス』は、以下の通りです。

 

  1. グローバリズムイスラム原理主義という二つの大きな脅威に打ち勝つために、フランスとロシアは力を合わせるべきだ。
  2. ロシアが国際社会から批判されているクリミア併合などのウクライナ問題についても、立場はロシアと一致している。
  3. EUの対ロ制裁については、公正とは言えず、なにより馬鹿げている。

 

ルペン党首は4月の大統領選に向け、いよいよ最後の賭けに出ました。

かなりのインパクトを与えたことは事実ですね。

フランスは主権を取り戻すべきだという持論を繰り返していますが、このアクションが吉と出るのか凶と出るのか、興味は尽きませんね。

 

 


にほんブログ村