カワセミのまなざし

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野鳥とクラシックギターへの強い想い

日本発"サカナ"は大海に泳ぎ出て大魚に変身できるか……『Sakana AI』のインパクト

(生成AIで作成した魚の群れ)⇧

皆さん《スイミー》のことは小学校の教科書でご存知と思います。

作者が伝えたいことはたくさんありますが、やはり最初に思い付くことは「みんなでチカラを合わせれば、大きな力を発揮できる」ですね。

その想いを生成AIの世界で体現している企業があります。

その名前はなんと【Sakana AI】 あまりにもユニークですが、グットネーミングですね。

Sakana AI』とは

・2023年7月に東京で創業した人工知能(AI)開発の新興企業(中心メンバー10名)

・共同創業者3名

  1. デビッド・ハCEO(AI研究者でグーグル・ブレインの日本部門統括の経験)
  2. ライオン・ジョーンズCTO(グーグル在籍中に生成AIの土台となる技術論文を発表)
  3. 伊藤 錬COO(外務省出身、世界銀行にも勤務。メルカリ執行役員等経験)

・7人の優れた研究者、技術者も在籍

何故日本を選んだのか?

  • ライオンCTOほかメンバーにも日本好きが多かったこと。
  • 米国では人材の移動が激しいが、日本だと日本愛に溢れたメンバーが腰を据えて仕事を出来る強固な態勢が作れること。

何を研究・開発して注目されているのか?

今までとは全く違うアプローチ生成AIの開発を行っていることで注目されています。

  • 具体的には、生成AIのベースとなる技術「大規模言語モデル」の開発に新手法を生み出しました。(「大規模言語モデル」とは、然言語処理の技術を利用して人間の言語を理解することができるAIモデルのこと)

この企業の存在価値である新手法とは?

進化的アルゴリズム(計算方法)」と呼ばれる技術を使い、異なる特徴を持つ小規模な複数のAI(小さな魚)を掛け合わせて優れたAIを生み出し、一日で数百世代の掛け合わせ(=交配)を重ねることで、効率的に高度化されたAI(大きな魚)を生み出す手法です。まるで生物の進化過程のようですね。

冒頭で記した通り、小さな魚が群れを形成して大きな魚を生み出す《スイミー》のイメージがこの手法と何となく重なります。

なぜこの手法が画期的で優れているのか?

現状、大規模言語モデルの性能を高めるためには

  1. 高性能の半導体を用いて膨大なデータを学習した巨大なAIを作る必要があります。
  2. 開発には莫大な資金力がいるため、巨大テック企業の独壇場になっています。
  3. 大量の電力を消費します。

そして、3つの課題をSakana AIはクリアしているのです。すなわち、巨大CPは必要なく、開発時間の短縮により資金負担が軽減され、電力消費も抑制されます。

評価の証左が、今年1月に米有力VCやNTTグループから総額約45億円を調達したことです。その技術力が客観的に正しく、しかも高く評価されたことになります。

結果、企業価値は300億円規模になりました。なお、6月中に更に200億円程度調達することが決まった様です。

今後、企業価値は11億ドル(約1700億円)を超え、2023年7月の創業から1年以内にユニコーン企業企業価値10億ドル以上の未上場企業)となる見通し(日経新聞)とのことです。

今思い感じていること....

「小よく大を制す」という格言通り、日本で創業し一年経過しただけの新興企業が、技術革新の目まぐるしい<生成AIの世界>を席巻し始めたことは実に痛快でたまりません。

グローバルな市場規模が6億ドル(約10兆円)を見込む中、独自の戦略で大海に泳ぎ出た日本発企業にこれからも注目していたいと思います。

⇩ 生成AIで作成した「生成AIのイメージ図」