最新更新日:2017/10/3
始めに
『人工知能(AI)』に関する2つの記事
- 人工知能(AI)進化に不可欠な「ディープラーニング(深層学習)」について ~その最前線~ - カワセミのまなざし
- 人工知能(AI)進化の先に辿り着く「シンギュラリティ」について ~その最前線~ - カワセミのまなざし
の中で
コンピュータは「半導体・処理能力の飛躍的な向上」により、「指数関数的な発達」を成し遂げ、情報テクノロジーは「直線的ではなく、放物線のような右肩上がり的な発達」を遂げることを説明しました。
しかし、従来型コンピューターは技術革新に限界が見えつつあり、その実現を疑問視する向きがあります。
人工知能(AI)や自動運転がもてはやされますが、膨大で複雑なデータの解析ができなければ絵に描いた餅。
そうした状況の中、最近になって一つの大きな光明が差してきたのです。
「量子コンピュータ」の登場です。
「量子コンピューター」とは
一般的には、量子力学的な重なり合いによって、従来型古典コンピュータではどうしてもできなかった『二つ以上の計算を並行して行えるコンピュータ』として認識されています。
量子力学とは、光や電子などを「粒子」とか、「波」とか、どちらか一方に決めつけるのではなく、両方の機能を利用した学問です。
もう少し説明しますと、微粒子の世界の物理現象を活用したコンピューターと言えます。従来とは違うアプローチで開発しました。従来型は情報を「0」か「1」で処理しますが、量子型は「0であると同時に1」の性質を持ちます。この性質を利用すると、天文学的な台数の従来型コンピューターを同時に動かすような成果が得られることになります。
「量子コンピュータ」の性能について
量子コンピュータは、従来のコンピュータに比べて、1億倍以上の演算速度を誇ります。
「1億倍高速」とは、従来のコンピュータで1億秒かかるものが、量子コンピュータなら1秒で終わるということです。1億秒は約3年2カ月に相当しますので、それがほんの一瞬で終わってしますことになりますので、それは驚異ですね。
「量子コンピュータ」の本格的な商用化について
グローバル企業による導入や実験が活発になっており、”最大で従来型コンピューターの1億倍以上という演算速度”に寄せられる期待は大きいようです。
D-Waveの量子コンピュータ
最新鋭機「2000Q」は1台17億円します。(セ氏零下273度の)絶対零度で演算チップが稼働するそうです。内部は冷却装置以外ほぼ空洞でクリスマスツリーを逆さにしたような装置の先端に「量子ビット」と呼ばれる演算回路が1枚埋め込まれています。CPU(中央演算処理装置)はありません。不思議なコンピュータですね。
米グーグルと米航空宇宙局(NASA)はあるビッグデータ解析について「DWS装置は1億倍速い」との調査結果を公表。DWS最新鋭機は米サイバーセキュリティー企業が最初の顧客で7月にはグーグルも購入しました。
日本では今年、リクルートコミュニケーションズが導入。検索履歴からネット利用者ごとに「圧倒的な正確さ」(同社)で推奨商品を示す計画です。
その他の企業動向
NTTなどは量子現象を利用し、脳の神経細胞ネットワークのように協調して動くコンピューターを開発しています。
無論、米IT(情報技術)大手も黙っていません。IBMは5月、DWSとは異なる方式で量子コンピューター用演算装置を開発したと発表しました。グーグルはDWSの顧客でありながら自らも開発を進め、著名な技術者を次々と引き抜いているそうです。
「量子コンピュータ」の将来について
冒頭で記した通り、従来型コンピューターの革新は処理能力を1年半ごとに倍増させてきた半導体がけん引してきたものの、微細化、高速化、省電力化は限界に近いとされ「メーカーが開発投資を回収できるだけの性能上の改善はもう期待しにくい」(IHSマークイットの南川明主席アナリスト)と言われています。
「量子コンピュータ」の原動力とは
AIにつながる機械学習はデータの規則性などを糸口に人間に代わり判断します。ただ従来型では厳密な答えを導けなかったりするケースがあると言います。
実は、量子コンピューターはこうした「組み合わせ最適化」を得意とします。創薬や画像認識などで効果が大きく、米ロッキード・マーチンはステルス戦闘機開発に活用しました。
本格的な商用化を予感させたのが、独フォルクスワーゲン(VW)が中国・北京で実施したテストです。タクシー1万台の全地球測位システム(GPS)を解析。うち418台で北京空港まで渋滞に巻き込まれない最適なルートを探し出しました。かかった時間は数秒。従来は30分かかっていたそうです。
「量子コンピュータ」の弱点
弱点もあります。絶対零度で稼働する演算チップは「ノイズ」と呼ばれるちょっとした温度や磁力の変化、震動があるとうまく作動しません。能力引き上げに量子ビット搭載数を増やした場合の安定性なども未知数です。
最後に
人類の飽くなき探究心が画期的なコンピュータを生み出し、実現化に漕ぎつけました。
とある量子コンピュータ開発会社のCEOは語っています。「量子コンピューターはビジネス現場のすぐそばまで来ている」
「量子コンピュータ」は「シンギュラリティ」実現の最大で最後の切り札です。
日本でも独自の発想で「量子コンピュータ」開発の道を拓きました。(2017/9/24)
東京大学の古沢明教授と武田俊太郎助教は、次世代の高速計算機と期待される「量子コンピュータ」を1つの回路で作れる手法を開発しました。
新手法は、カナダのDウエーブ・システムが世界で初めて商用化した「量子コンピュータ」とは計算方式が異なります。
15年後の実現を目指します。
その仕組みとは
《量子ビットの情報》を「量子テレポーテーション」という通信手法を用い、そっくり別の場所に移動させ、「ある時は乗算、ある時は除算」と言うように、都度切り替えて、希望の処理を行うものです。
今までの課題
量子コンピュータは膨大な量の計算を瞬時にこなせます。作動原理が現在のコンピュータとはまったく異なり、電子などの極めて小さな世界で起こる物理現象を利用します。回路の中を通る原子や「光子」と呼ぶ光の粒を計算に用います。
粒を多く使うほど計算できる量も増えますが、光などが通る機器も大型になるなどに課題がありました。
そのメリットとは
1個の量子テレポーテーション回路とループ構造だけで構成でき、最小限の光学部品だけで済む上、光パルスをループで周回させ続ければ、効率よく高速・大量の計算ができます。
したがって、計算を担う機器を小さくでき、コストの抑制などにつながります。
古沢教授は「理論上は100万個以上の光子を計算に利用でき、現在のスーパーコンピューターとは桁違いの計算が可能になる」と話しています。
今後の課題
「計算のエラーを自動修正する技術」など残る課題の克服を目指します。
日本の技術も負けていませんね。技術立国「日本」の力を全世界に見せつけて欲しいものです。