・記事更新 2017/2/27
”ポピュリズム”って、どういう意味でしょうか?
言葉の響きから、何となく”ポピュラー”という言葉を連想する方もいると思います。
”ポピュラー”とは「一般に人気のある、評判の良い、大衆に知れ渡っている」などの意味ですから、かなり関係が深いようです。どちらにしても「people」が語源です。
”ポピュリズム”とは、本来
- 普通の人々の利益・権利・願いを汲み取り
- 普通の人々の支持を得て
- 既存のエリート主義の人々や、いわゆる体制側の人々に
- 普通の人々の意思を伝え、それを実現させる
- 政治のやり方(=政治手法)のことです。
ですから、民主主義の趣旨から考えますと、全く問題が無いように思えます。
ほとんどの人が悪いイメージを持っています。
なぜそうなるのか、自分なりに考えてみました。
◎ ひとつは ”ポピュリズム”は「大衆迎合主義」と訳されるためです◎
「大衆迎合主義」とは
大局的・長期的なことを考えず、その時点で大衆に受け入れられる政策を掲げ、大勢の人々の支持を得て、権力を獲得することです。
日本で言えば、政党が迎合的なマニュフェストを掲げ、政権をとるとその約束を反故にするようなものですね。
◎もう一つは、偏った「ナショナリズム」と結びつきやすいからです◎
本来「ナショナリズム」とは「自国を誇りに思い、その文化や生活習慣に愛着を持ち、自国の発展を目指す思想」ですが
偏った「ナショナリズム」は
国民に迎合し、国民の利益を国際的な役割より優先させ、その目的を達成させるためには、戦争という手段をとることもあるからです。
「トランプ氏のポピュリズムは危うい」のか、考えてみましょう。
トランプ氏は
大前提として「アメリカ第一主義」を掲げています。
- 貿易では、TPP(環太平洋連携協定)に署名せず、各国との相対で交易条件を決め、保護貿易を進めようとしています。
- 税制では、所得税や法人税の引き下げを考えています。
- 移民政策では、不法移民・麻薬の流入を防ぐため、メキシコとの国境に高い壁を築こうとしています。
- 対テロ(特にイスラム国)対策では、「イスラム教徒の入国を禁止」を実施しようと考えています。
これらの政策は、本来的な意味の”ポピュリズム”、すなわち上記した1~5のすべての要素を含んだ民主主義の実現なのか、あるいは短絡的な人気取り(=大衆迎合主義)なのかがポイントです。
現状を踏まえた結論
昨日ついに「イスラム圏7か国からの市民の入国を一時禁止する大統領令」が出ました。世界的な混乱になっています。
このことを考えますと、偏った「ナショナリズム」と結びつくことが懸念され、本来的な意味でない、危うい”ポピュリズム”に一歩足を踏み入れた気がします。これからも注意深く政策の実行動向を見守る必要がありそうですね。
最近、TVで林先生が面白いクイズを出して話題になっています。
「まがいなりにも」と「まがりなりにも」ではどちらが正しい表現かという内容です。
正解は「まがりなりにも」です。「曲がりなりにも」と書き「不十分だが、どうにかこうにか」という意味です。
一方、「まがいなりにも」という表現は無く、「紛い物(まがいもの)」という言葉があり、ここから由来して広く誤用されるようになりました。「紛い物」とは偽物のことです。
★トランプ氏は”曲がりなりにも”これから大統領の責務を務めていけるのか、あるいは「紛い物」だったのか、これから半年が勝負でしょうね。
《追加記事:第1回》
alternative facts(もう一つの事実)が米国政治をかき回し始めています。(2017/2/12)
ジョージ・オーウェンが1949年に出版した反ユートピア小説『1984年』が70年近くたって、アマゾンでベストセラー1位を占めているそうです。
このニュースは、トランプ新政権が発足した米国の現状を的確に物語るエピソードとして注目されています。
この小説は
- 全体主義国家によって分割統治された近未来世界の恐怖を描いています。
- その物語の中で現れる「ダブルスピーク(二重語法)」は、矛盾した二つのことを同時に言い表す言葉ですが、”alternative facts(もう一つの事実)”を連想させるということです。
ホワイトハウスのコンウェー大統領顧問が口にした”alternative facts(もう一つの事実)”という言葉は、米国政治が事実を重視しない「脱真実」の新時代を象徴しています。
私が危惧している偏った「ナショナリズム」がそこまで迫って来ているようで心配です。
トランプ政権が「紛い物」では無いことを切に願うばかりです。
《追加記事:第2回》
『ポピュリズムとは何か』が昨年12月に出版されました。(中公新書:水島治郎著) (2017/2/27)
本書は、ポピュリズムをエリートを批判する「下」からの運動としている点に特徴があります。
そして、大きなポイントは3つです。
- ポピュリズムは、民主主義から切り離すことは不可能であり、かと言ってポピュリズム政党を取り込むと、民主主義が動揺する 。
- ポピュリズムには「解放」と「抑圧」の両側面がある。
- 欧州のポピュリズムが、政教分離や男女平等の名の下「反イスラム」を正当化しているところが大きな課題である。
ポピュリズムの持つ危うさにどう対処するか、民主主義が問われる中、既成政党に対し「開かれた」政党に向けた”自己変革”をこの本は期待しているようです。
一読してみてはいかがですか?