(苦労して作り上げた野鳥撮影用藁葺きブラインド)
日経新聞の9月7日付朝刊で、ある記事に思わず目が止まりました。要約しますと
- 野鳥撮影の先駆者であり、記録性と芸術性を兼ね備えた生態写真家『下村兼史』の生誕115周年を記念し、初めての本格的な展覧会が9/21~9/26に開催される。
- 100年前に日本で初めて撮ったカワセミ、2枚しか写せなかったルリカケス、松の木の上の巣でたたずむコウノトリ……。下村が猛スピードで飛び回る鳥を性能が良くない当時のカメラで撮ることができたのは、生態を十分に理解し、粘り強くシャッターを切る瞬間を待っていたからにほかならない。
- その価値は記録性というだけにとどまらない。下村の写真は鳥の姿だけではなく、周囲の環境まで写し取っていた。鳥類写真というと、鳥の姿を単純に大きく捉えるものが多いが、下村の構図には芸術作品とさえいえる美しさがある。
という事で、週末にさっそく観て来ました。
受付には既に行列が出来ており、とても盛況でした。
下村兼史/しもむら・けんじ(1903-1967)とは
1903年佐賀県生まれ。1922 年、日本初の野鳥生態写真となるカワセミを撮る。1928年、鹿児島県荒崎のツル類の写真集が天皇陛下へ献上される。1930-39年、農林省鳥獣調査室に勤務しながら、日本各地の天然記念物や希少種の野鳥を撮影。1935年、英国での万国自然写真博覧会に出展した作品が国際的な評価を受ける。1939年以降は映画の監督、演出・脚本家として活躍するかたわら、野鳥観察紀行、鳥類図鑑などを多数執筆。
佐賀市の実家は資産家で、豪邸の庭は広く三つもの池があり、 一年を通じて野鳥たちが訪れ、渡りの時季にはオオルリ・コルリ・アカショウビンなどが顔を出し、池にはカワセミが訪れるのを下村は観察していたそうです。
下村は科学者か芸術家で身を立てようと思っていましたが、病気がちのため、父親からカメラをあてがわれ、「カメラ・ハンティング」と称して、野鳥を追い回すようになり、そこから野鳥撮影にのめり込んでいったそうです。
どうやって日本初の野鳥生態写真となるカワセミを撮ったのか?
ツツドリの雛に給餌するセンダイムシクイ(1930/5/20 富士山麓須走)
愛機「グラフレックス」について
- 重さ3.8キロ(望遠レンズをつけると重さ5キロ)
- もちろんカメラは全手動
- シャッターは1回きり
- 1日に撮れる写真はたった12枚のみ
最後に
100年も前にこんなにも情熱を傾けて、野鳥撮影に挑んだ人物がいたとは、驚きと感動でした。
苦労の連続だったとは思いますが、強い信念の先に生まれた迫力ある写真にはこころ動かされました。
このモノクロの世界には、色彩豊かな世界の綺麗な写真とは一線を画す美しさがありました。
是非一度ご覧頂くことを強く願うばかりです。