カワセミのまなざし

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クラシックギター その魅力 Vo.5 ~アストル・ピアソラについて~

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前回まではクラシックギターの「楽器の特質・魅力」を自分なりに解説して来ました。

今回からは、「楽曲の魅力」について、「時代別・地域別・作曲家別」に思うままに書いて行きたいと思います。

  第1回目は、アストル・ピアソラです。 

 

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ピアソラをご存知の方は、どの位いらっしゃるでしょうか?

実は、今年はピアソラの没後四半世紀に当たり、彼に焦点を合わせた公演や企画が相次いでいます。

日本では、ピアソラから薫陶を受けたバンドネオン奏者、ネストル・マルコーニに師事した音楽家が、タンゴ中心の室内楽団「東京グランド・ソロイスツ」を立ち上げました。メンバーはユニークで、神奈川フィルのコンサートマスターである石田泰尚らクラシック音楽を集めています。7月28日に第一生命ホールで「ヴァルダリート」などピアソラの曲を中心に演奏しました。

アストル・ピアソラとは

アルゼンチン生まれで、伝統的舞曲「タンゴ」にクラシックやジャズを融合させ、新たな音楽を生み出したバンドネオン奏者でかつ作曲家です。(1921生~1992年没)

90年代後半に世界的なチェロ奏者”ヨーヨー・マ”が取り上げてCMでも有名になった「リベルタンゴ」が世界的にヒットしました。お聞きになれば、「あぁ、あの曲か!」と思い出されるかもしれませんね。

 

<このおじさんの演奏はとても上手ですね。編曲もよくスリリングです>

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ピアソラの音楽スタイルとは

クラシックやジャズの手法を取り入れたピアソラは「タンゴの革命児」と呼ばれましたが、当初伝統的なタンゴ奏者からのは厳しく批判されました。

何故ならば、本来タンゴは「踊るための音楽」であったに対し、ピアソラのタンゴは「聴くための音楽」だったからです。

詳しく説明しますと、彼は

①典型的なアルゼンチンタンゴの強烈な2拍子のリズム

バロックやフーガ等のクラシックの構造

③センチメンタルで、優しさと悲しさと郷愁を持ち合わせたメロディー

を自由に展開させるいう独自の音楽スタイル(=表現)を作り上げました。

タンゴに革新をもたらした背景とは

  • 4歳から15歳までニューヨークに移住し、その間にジャズに親しんでいました。その時に聞いた「洗練された」・「クール」なニューヨークジャズのエッセンスが、その後の音楽活動に大きく影響します。
  • アルゼンチンに帰国後、バンドネオン奏者として頭角を現しますが、同時期、アルベルト・ヒナステラに師事し音楽理論を学び、クラシック音楽に興味を持ちます
  • その後自らのタンゴ楽団を率いて音楽活動を開始しますが、古典的なタンゴに限界を感じ、クラシック作曲家を目指し渡仏し、パリでナディア・ブーランジェに師事します。
  • しかし、ブーランジェにタンゴこそがピアソラ音楽の原点とアドバイスを受けて、タンゴの革新を目指します。

ピアソラ音楽に対する評価

帰国後、ピアソラは理想的な音楽編成を求めて数多くの楽団の結成・解体を繰り返します。

ただし、自国では「20年先をいった本流を外れた音楽」とか「踊れないタンゴ」と酷評されました。

そんなアゲンストな風の中でも、クラシックや現代音楽の演奏家からは評価が高く、あのギドン・クレーメルなどが好んで演奏してました。

現在ではピアソラと対立した多くの音楽家がこの世を去り、その功績は自国のしがらみを超えて、国際的に高く評価されるようになりました。

クラシックギター界での評価

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バンドネオン奏者でありながら、数多くのギター曲(他楽器との重奏曲中心)を作曲しており、クラシックギター界では欠かすことの出来ない重要な存在です。

日本を代表するギタリスト”福田進一”は、「彼の音楽が広く演奏されるのは、ハーモニーの豊かさがあるから」と指摘します。

福田氏は8月18日~20日、ハクジュホールで開催する「ギター・フェス」で、ピアソラの楽曲を軸に南米音楽をテーマとした公演を企画しています。「西洋音楽民族音楽が同居する南米の魅力を伝えたい」と語っています。

  では、最後にピアソラの楽曲を3曲紹介したいと思います。

 『タンゴの歴史』

彼の仕事がやっと軌道に乗り始めた頃に書きおろした多楽章曲の一つです。

フルートとギターのための4楽章からなる曲で、楽章ごとに30年の間隔を置いて、タンゴがどうように変遷してきたかを表現しています。

<第1楽章> 「1,900年:売春宿」

欧州出身の売春婦たちが、遊びに来る警官・泥棒・ろくでなしたちを誘惑しからかう様子を描いています。音楽は優美で活気に溢れています。

<第2楽章> 「1,930年:カフェ」

人々はタンゴを踊るのを止め、タンゴを聴くようになりました。その結果、より音楽的でよりロマンチックな音楽に変容しました。動きはゆっくりとして、新奇でメランコリックなハーモニーに溢れています。

<第3楽章> 「1,960年:ナイトクラブ」 

この頃、タンゴはボサノバと同じリズムを刻むようになり、大幅な変革の時期を迎えます。新しいタンゴを聴きに、人々はナイトクラブに殺到しました。タンゴは大きく変わったのです。

<第4楽章>  「1,990年:現代のコンサートホール」

ここに至り、タンゴ音楽のコンセプトは、バルトーク・ストラビンスキー、その他の現代音楽と混じり合います。無調と調性が入り混じり、第1楽章のモチーフが使われています。

 

 <各楽章の特徴をよく捉えた素晴らしい演奏です。ギター音も明瞭です>

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『アディオス・ノニーノ』

ピアソラの初期の作品です。経済的に困窮していた時期、プエルトリコに巡業中、父親ビゼンテ(愛称ノニーノ)が故郷で亡くなった知らせを受け取りました。しかし、アルゼンチンに帰る旅費がありませんでした。したがって、この曲は、ニューヨークに戻り、失意のなかで亡き父に捧げた曲です。

初録音は五重奏団によるスタジオ録音でしたが、その後様々な編曲がなされています。

今回は名ギターリストで4年前に亡くなった「稲垣 稔氏」のソロ演奏をお聞き下さい。素晴らしい美音(おそらくブーシェ)を響かせています。名演奏です。

 

 <2曲目です:5分20秒目からスタートします>

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『タンティ・アンニ・プリマ ~Ave Maria~ 』 

映画「エンリコ4世」の挿入曲で、美しいメロディーと和声が印象的です。通常はオーボエなどの旋律楽器&ピアノ(ギター)などで演奏されます。

今回は故「佐藤弘和氏」の編曲で珍しくギターソロになっています。

 

 <ゆっくりとしたテンポですが、マリア様の慈しみが感じ取れます>

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最後に

いかがでしたか。ピアソラの作品はギター楽曲として、なくてはならない貴重な財産です

今年がピアソラの没後四半世紀に当たり、他の著名な作曲家を押しのけて紹介させて頂きました。

これからも、順次作曲家別に作品を紹介させて頂きますので、お楽しみに‼

 


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