カワセミのまなざし

カワセミのまなざし

清流の中に濁りを見つけ出す

クラシックギター その魅力 Vo.4

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前回は「クラシックギターの歴史」について述べました。

今回は、「クラシックギター製作者の系譜」についてお話しします。

最後に名曲・名演奏の紹介がありますので、最後までお付き合い願いますね。 

 

前回お話した通り、スペイン・ギターの父祖「アントニオ・デ・トーレス」によって現代ギターの原型が出来上がりました。

しかし、彼は弟子を取らず、天才の技は一代限りで終わりました

にも拘わらず、彼の影響を受けたギター製作者が多く現れ、彼の遺した楽器を通じて多くの事を学び、さらに製作技術を発展させていきました。

スペインに始まり、ドイツ・フランス・英国・イタリア等の欧州各国、日本、アメリカ、オーストラリアと、世界中でギター製作者が誕生しました。

各国ごとの著名な製作者の系譜は次の通りです。(私の個人的なチョイスです)

なお、師弟関係は次のような矢印で示します。

師匠

弟子

スペイン

マドリッド派(ラミレス一門)

更に2つのグループに分類すると以下の通りです。

★ホセ・ラミレス1世〜4世

スペイン・ギターの本流であり、世界的に最も知られている楽器です。高音が豊かで深く艶のあり、低音に伸びがあり、一度は手にしたくなりますね。

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パウリーノ・ベルナベ(ラミレス3世の弟子)

 私も使っています。艶と哀愁ある音色で、スペイン音楽にはぴったりです。

マリアーノ・テサーノス(ラミレス3世の弟子)

 

★マヌエル・ラミレス(ラミレス1世の弟)

傍流ですが、優秀な弟子を育ています。

サントス・エルナンデス

現代的なギターの父、スペインギターの原点と言われ、ある面で頂点を極めた楽器と評価されています。太く底力のある低音が特徴で、トーレスの流れを受け継いでいますセゴビアが愛用していました。(マヌエル・ラミレスの名前で製作)

マルセロ・バルベロ

アルカンヘル・フェルナンデス

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大御所、スペインの伝統を受け継いだ最高峰と言われています。バランスがよく、濁りが無い音で、高音部にほのかな色気があります。

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マルセロ・バルベロ・イーホ

ピアノ的バランスとスペイン的な暖かみ、ほのかな甘さ、重厚さなどがうまくバランスしています。男性的な力強さと品も感じられます。

 

グラナダ

スペイン・ギター製作家系譜のもう一つの大きな柱です。

ニートフェレールマルティン

エドゥアルド・フェレールカスティージョ(べニートの甥)

アントニオ・マリン・モンテロ

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グラナダ派の棟梁。上品な音色を持ちながら、音が出しやすく音量もあります。ブーシシェとの出会いが大きく製作手法に影響を与え、さらに人気を高める要因となりました。

 

その他 (独立系)

イグナシオ・フレタ・エ・イーホス

もともとバイオリン製作者でしたが、セゴビアの演奏に感動してギター製作を独学で開始しました。豪快でしかも自然で、ラミレスの音色とは対照的です。太くて豊かな質感でステージでの信頼性には定評があります。

ホセ・ルイス・ロマニリョス 

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現代の製作者で、最高峰のひとり。イギリスに渡りギター製作を独学で開始しました。ただし、トーレスにつながるクラシカルな響きが特徴でスペイン・ギターの本流。ジュリアン・ブリームが愛用していました。

 

ドイツ

ヘルマン・ハウザー家が有名であり、現在はハウザーⅢ世が活躍しています。

f:id:Hatabou:20170328101420j:plainハウザーⅠ世は当初「ウインナータイプ」と呼ばれるボディーが広く薄いタイプのギターを製作していましたが、トーレスギターと出会い、その技術を学び、ドイツで進化させて、ハウザーモデルを完成させました。バランス重視で、やや硬めの透き通った粒立ちのよい音色が特徴です。セゴビアも気に入っていました

私の使っている「フリッツ・オベール」もドイツ製作者のもので、トーレスタイプです。

 

フランス

ロベール・ブーシェ

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本業は画家ですが、48歳から独学でギターの製作を始め、生涯でわずか154本の楽器しか製作しませんでしたが、気品があり、奥行きのある音色で多くの演奏家を魅了してきました。

ダニエル・フレドリッシュ

ブーシェの工法を学び、作品は多くの賞を獲得しています。ブーシェの音を継承しながら、独自の美しく伸びのある音色が評判です。

 

ユーゴ・キャバリエ

東京国際ギターコンクールでザビエル・ジャラがこの楽器を弾いて優勝しました。とにかく音量が桁外れで古典的な音色とのバランスも良く、楽器のニューウェーブを感じさせ、かなりの注目を浴びています。

 

英国

デイヴィット・ホセ・ルビオ

ブリームが愛用したことで有名になりました。重厚で粘りのある低音と、透明で引き締まりながらも、まろやかな高音が特徴です。

ポール・フィッシャー

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ホセ・ルビオの作品は、実際には彼が手掛けたものが多いですね。

 

イタリア

アンドレア・タッキ

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最近まで公務員だったこともあり、今までは年 1本しか製作しないと噂されていました。彼もブーシェの弟子です。安定性があり、艶のある透明感溢れる音色で人気です。

 

 アメリカ

ポール・ジェイコブソン

アメリカを代表する製作者です。精巧な造り、おおらかで力強い音色で評価が高く、愛用者も多いようです。

マヌエル・ベラスケス

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サントス・エルナンデスの遠戚で、ハウザーⅠ世の影響を強く受け、外見も音色もよく似ています。セゴビアハウザーⅠ世の後継ギターとして認めた銘工の一人です。

 

オーストラリア

グレッグ・スモールマン

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ごく薄い表面版と分厚い裏板、ワッフル構造の力木というユニークな構造しています。音量が大きく、ピアノな表現も上手く弾くことができます。でも、とても重いですね。ジョン・ウイリアムスが愛用しています。

 

 日本

中出阪蔵 

日本クラシックギター製作の草分け的存在です。セゴビアの初来日の際、セゴビア使用のギターのコピーを許されたことで、本格的にギター製作を始めました。

中出輝明、敏彦、幸雄(3兄弟)

星野良充(中出阪蔵の弟子)

今井勇一(中出輝明の弟子)

今井は 広いダイナミックレンジと全音域にわたる音の分離の良さなどが好評で、ドイツの愛用者も多いようです。日本での人気も格別ですね。

河野賢

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独学で学びましたが、アルカンヘル・フェルナンデスの工房で3ヶ月修行。海外で最も評価されている日本の製作者の一人です。

桜井正毅

河野賢の甥で、彼の正統な後継者。国際的な評価もかなり高いですね。

松村雅亘、横尾俊佑(河野賢の弟子) 

尾野薫

今井勇一とともに現在日本を代表する製作者で、その技術力は驚異的です。引き締まった透明な音で、弾き込むごとに味わいが深まってきます。私も愛用しています。

 

以上が各国の優れたクラシックギター製作者の系譜です。スペインで始まった現代ギター製作のうねりが、あっという間に世界各国に広まりました。

楽器は日々工夫・改善が加えられ、進化しています。その中でも「音量アップ」は大きな課題ですね。音質とのバランスを保ちながら、バイオリンくらいの音量がでれば最高ですね。そんな楽器が出てくることを大いに期待したいと思います。

 

では名曲・名演奏の紹介です。 

今回は一人のギタリストのアルバムを紹介したいと思います。

アルバム名「Transcriptions」

<アルバム内容>

1.スカルラッティの「ソナタ」(K141)

2~7.バッハの「パルティータNo.1」(BWV825)

8.メンデルスゾーンの「舟歌」(Op.19 No.6)

9~21.シューマンの「子供の情景」(Op.15)

22.ラベルの「亡き王女のためのパバーヌ」

24~25.「プレリュード」(自作)

26.ドビッシーの「月の光」

演奏家「Rafael Aguirre」

ラファエル・アギーレ”はスペイン出身のギタリスト(32)です。タレガ国際やソル国際など、13もの国際コンクールを制覇した実力者です。「 セゴビアイエペスの後継者」と絶賛されています。昨年来日しました。

このアルバムは題名どおり自身で”編曲”したもので、バロックから新印象派までバランスのとれた優れた作品に仕上がっています。特にラベルとドビッシーは秀逸ですね。

時間が許す限り是非お聞きください。

 

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