カワセミのまなざし

カワセミのまなざし

清流の中に濁りを見つけ出す

「幸福学」は悩み多き日々を支える良薬になってくれるのでしょうか?

f:id:Hatabou:20170308220025j:plain

慶応大学の前野隆司教授は「幸福学」なる学問を研究して、最近話題になっています。

前野教授は最先端の機械工学のエンジニアであり、ロボットの研究者です。そのバリバリの科学者が、40歳過ぎて、人間の幸せについて真剣に想いを巡らすことになりました。

それが「幸福学」研究のきっかけです。

実は、大学院卒業の頃から、自分のやっている研究では、一部の人々しか幸せに出来ないとの忸怩たる想いがあったそうです。

 

 前野教授の「幸福学」では

  

「幸福」とは

長期的に〖身体的、精神的、社会的に良好な状態にあること〗を意味します。

「幸福学」研究では、「幸福」よりも「ウェルビーング(well-being)」という言葉を使っています。

日本語の「幸福」のイメージより、「安心、安定、安寧、福祉、健全、健康」に近いイメージです。

幸福(財産)は2種類あります。

地位財

  • お金や社会的地位、家や車など、周りの人と比べて満足を得られる幸福(財産)のこと。
  • この幸福は長続きしません。

非地位財

  • 健康な心と体、自由、愛情、良い環境など、周りの人とは関係なく得られる幸福(財産)です。安全、安心に生活するために重要なものです。
  • この幸福は長続きします。

 

★《非地位財》こそが「幸福学」が志向する幸福の原点となります。

 

幸福は4つの因子(要因)で構成されています。

幸福は“形がない”ので実感しにくく、目指しにくいものですが、これまでの研究で4つの因子がある事が分かりました。

(第1因子)

  • やってみよう!」因子(=自己実現と成長の因子)
  • 夢や目標を持って、自ら成長すること。

(第2因子)

  • ありがとう!」因子(=つながりと感謝の因子)
  • 人とのつながりに感謝して、他者を喜ばせる。

(第3因子)

  • なんとかなる!」因子(=前向きと楽観の因子)
  • 自己肯定感が高く、失敗しても楽観的でいること。

(第4因子)

  • あなたらしく!」因子(=独立とマイペースの因子)
  • 他人と比べず、自分らしくマイペースでいること。

 

英語の「happiness」の日本語解釈上の留意点

以下3つの感情は、英語ではすべて「happiness」と表現されるため注意が必要です。

・「うれしい」は(短期的な)感情

・「楽しい」は(感情より長く続く)気分

・「幸福」は(気分より長く続く)心の状態

 

「幸福学」が目指してるもの

 

短期的な幸せである《地位財》を求めるのでは無く、個々の身近な満足・不満も含めて、人生に『全体として』満足しているか、すなわち《非地位財》を模索しながら「人生の全体像」を捉え、長期的な幸福を得ることを目指しています。

 

 

「幸福学」を人生の2つの局面で考えてみましょう。

 

ひとつは、’’幼少期’’です。

 3/8のYahooニュースで、”ベネッセ教育総合研究所”が行った前野教授へのインタビューとして、面白い記事が掲載されていました。

f:id:Hatabou:20170308223754j:plain

「将来、こどもの幸福度を上げる習い事はあるのか?」と質問をしたところ

前野氏が監修した研究で、25~34歳の社会人(未婚・子供なし)2,700人を対象に行った音楽に関する調査の結果

「子どものころ音楽を習っていた人は、大人になって『自分は幸せだ』と感じる率が高い」という結果を得たと答えています。

音楽の演奏には「幸福の4因子」がバランスよく含まれていることが、その根拠です。

  • 毎日の練習など、目標に向けて努力することは、「やってみよう!」因子
  • ほかの子の音楽を聴いて協調(共鳴)することで、人とつながる「ありがとう!」因子
  • 勝ち負けにこだわらず、個性や芸術性を大切にする、「あなたらしく!」因子

等など

実際、音楽や絵画などのアートの分野で活躍する人は、幸福度も高いと前野氏は言っています。

子どもの感性を磨く情操教育としても、音楽は素晴らしい」と話し、前野教授はインタビューを締めくくっています。

 

私は中学から楽器を始めましたが、前野教授の考え方に接し、「幸福の4因子」のお陰で多少なりとも幸福なのかなと、今は思うようになりました。

 

 もう1つは、ネット上でも嫉妬や恨みが蔓延する’’今を生きる成人期’’です。

f:id:Hatabou:20170211141814j:plain

 以前書いた記事で、この問題を「こころの揺らぎ」の観点から考えました。

《嫉妬は》
  • 対人関係から生じるこころの揺らぎ」のこと。
  • 人間の根源的な感情であり、消し去ることは出来ないので、相手にも弱みがあるのだから、シンパシーを感じ、相手を理解することが必要と述べました。
《ストーカー行為から生まれる「恨み」は》
  • 自分自信に向かったこころの揺らぎ」のこと。
  • 自分に自信が無いため起きる感情であり、確かな学習による”判断力”や”教養”を身に付けることが肝要と結論付けました。
 日頃の心構えとして

こころが揺らいでいるときは、大きく息を吐き”氣”を受け入れ、「幸せはいつもこころが決める」と、数回確かめるように呟く。そうすると、"気持ちが自然と落ち着く"と説明しました。

 

 この問題を前野「幸福学」の観点から分析すると

 

「嫉妬」や「恨み」を感じている場合は、四つの因子がバランスが悪いことを意味します。

  • 「嫉妬」は、第4因子である「あなたらしく!」(=他人と比べず、自分らしくマイペースでいること。)が乏しい状態です。
  • 「恨み」は、第3因子である「なんとかなる!」(=自己肯定感が高く、失敗しても楽観的でいること。)が乏しく自分に自信がない状態です。
その解決策は

四つの因子は互いに深く関係しているのですから、例えば次のことを心がけることで因子相互を活性化させることが必要です。

  • 小さいことでもいいからワクワクすることを見つけて成長を実感する。
  • 交友関係を広げて助言や支援を手に入れる。
  • 楽観性を身に着ける。

 そして、そのようなことを実践していけば、おのずと「幸せはいつもこころが決める」と実感できるようになるのでしょう。

 

hatabou.hatenablog.com

 最後に

 

前野教授の「幸福学」は、心理学をはじめ哲学や工学、政治学、経営学など多様な学問分野を横断し、個別の研究成果を体系したものとされています。

しかし、そのエキスとなる「地位財」と「非地位財」、そして「4つの幸福因子」は、古くから日本人のこころに根付いている『良心・道徳心に基づく正しい生き方』と近代的な『行動規範』が結びついてアウトプットされた産物のような気がします。

だからこそ、説得力があり《腑に落ちる》と感じることが出来るのでしょう。

魑魅魍魎として不確かで息苦しいこの世界で、「幸福学」という一つの羅針盤を見つけられたことは本当にラッキーでした。

皆さまはどのように感じられましたか?